相談事例について

CASE 1役員のなり手不足

築38年、55戸の住居専用のマンション 理事長
Q
近年、役員のなり手がなく毎年総会が近づくと次期の役員候補を探すのに苦労しています。高齢者も多いのですが、仕事が忙しいということで引き受けていただけない状態です。
A
昨今の役員のなり手不足の件は、高経年マンションに限らない問題です。多くの管理組合で次期の役員候補を決めるまでに難儀されているようです。

その対応策として、役員報酬を出す、役員の資格の範囲を広げる(組合員の配偶者や一親等内の親族までとするなど)ことなどが検討されこれもまた多くの管理組合で実施されているようです。しかし、役員のなり手不足の解消に至っていない場合も散見されます。

2016年3月に国交省から公表された「マンション標準管理規約」では、ご質問のようなマンションの高経年化の進行等による管理の困難化に加えて、マンションの高層化・大規模化等による管理の高度可・複雑化が進んでいることから、この課題への対応の一つとして、外部の専門家の活用について示されています。

マンション標準管理規約が示す外部の専門家が管理組合運営に携わる際の基本的パターン
① 理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型
② 外部管理者理事会監督型
③ 外部管理者総会監督型

専門家を役員として選任するには、その定めを管理規約に定めることと、専門家への費用の予算化が必要です。
なお、以前から、マンション管理士等が管理組合との顧問契約等において組合運営(理事会運営)を補助しているケースがあります。このような管理組合では、役員候補を募集する際に、専門家のサポートもあり適正な組合運営が継続できる体制をとることで、無理なく役員への就任していただけるようアピールしています。

CASE 2管理委託契約の見直し

築7年、150戸の住居専用型のマンション 理事
Q
今期の事業(総会で承認済み)として、管理会社の変更も含めた管理委託契約の見直しを行います。複数社から選定しますが、どのようなことに気を付ければより良い管理会社を選定できるでしょうか。
A
管理会社の変更も含めた管理委託契約の見直しのためには、委託する業務についての共通仕様書を作成し複数社の管理会社から提案(見積り)を取得、その後比較検討のうえ候補の管理会社を決定し最終的には総会で過半数の承認を得ることになります。

管理業務を行う管理会社は、国土交通省に備えるマンション管理業者登録簿に登録されていること、さらには、国土交通大臣より指定を受けた法人である一般社団法人マンション管理業協会の会員である管理会社から選定することが考えられます。
一般社団法人マンション管理業協会の重要な活動として、管理費等保証事業、 相談業務・苦情解決制度等があります。
詳細は、こちら(一般社団法人 マンション管理業協会サイト)

比較検討の際に、委託費が高いか安いかについては分かりやすいと思いますが、業務の仕様も確認したうえで比較するようにしましょう。
どの会社もそれなりの回答になりますから、管理会社を変更したからと言って安心、というわけにはいかないのが多くの場合です。

管理委託契約を見直す際には、管理組合側も契約者であることを再認識し、委託契約の内容を正確に把握し、契約に基づく業務が行われているか否かのチェックをしっかり行っていくことが重要です。

CASE 3管理規約の変更

築38年、57戸住居専用型マンション 理事長
Q
現在、理事5名で運営しています。今期新たに理事になられた方から、管理規約に理事の規定が無いと指摘されました。確かに、入居当時の管理規約を見直したことはありません。新たな管理規約の作成はどのように行えばよいでしょうか。
A
管理規約を制定、変更する際の参考として、国土交通省公表のマンション標準管理規約があります。
マンション標準管理規約(単棟型)を参考に、変更案を作成していきます。規約には、原則的なことが定められているのでマンション標準管理規約にほぼ準拠したものになる場合が多いと思われます。

必ず標準に準拠しなくても良いですが、内容によっては法律によって変えられないこともあります。最低限、法律には準拠したものでなくてはならないので留意が必要です。

検討項目によっては、区分所有者の意見等を事前に把握するためアンケートを実施したりします。変更案が整いましたら区分所有者への説明会を開催します。説明会でのご意見等によっては、変更案を追加・修正するなどして最終案を作成します。

管理規約の変更は、総会における特別決議事項(組合員総数及び議決権総数のそれぞれ4分の3以上で決する)です。総会の招集通知には、規約の変更案を添付します。
管理規約は変更したら終わりではありません。日々の運営の中でも、定期的にでも管理規約に関する広報等を実施するなど、多くの方が管理規約に触れる機会を作ることも大切な業務と考えます。

CASE 4総会への出席について

築37年 78戸 住居専用型マンション(外部居住の組合員が大半) 理事長
Q
平日の夜の総会から土日開催の総会にしても出席者は一人も増えず、理事3人と組合員2人の出席しかありません。委任状と議決権行使書で定数をクリアしている状況です。このような総会での席上、2人の組合員から「出席者の意見が反映されず、欠席している人の数で決まるのはおかしい!」との発言がありました。理事長としては、全く問題はない旨説明して総会は終了しましたが、確かに総会の出席者が少なすぎるように思います。何か手立てはあるでしょうか。
A
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第39条第2項において、「議決権は、書面で又は代理人によって行使することができる。」とされていますから、議決権行使書も委任状も有効です。マンション標準管理規約第46条(議決権)で、書面(議決権行使書)による議決権行使と代理人(委任状)による議決権行使についてコメントがあります。

以下、コメント抜粋
 そもそも総会が管理組合の最高の意思決定機関であることを考えると、組合員本人が自ら出席して、議場での説明や議論を踏まえて議案の賛否を直接意思表示することが望ましいのはもちろんである。しかし、やむを得ず総会に出席できない場合であっても、組合員の意思を総会に直接反映させる観点からは、議決権行使書によって組合員本人が自ら賛否の意思表示をすることが望ましく、そのためには、総会の招集通知において議案の内容があらかじめなるべく明確に示されることが重要であることに留意が必要である。

相談者と同様に、多くの管理組合の総会の状況は自ら出席する方よりも委任状と議決権行使書で定数をクリアしているものと思われます。法に照らしても無効になるものではありません。

ですが、上記のコメントに有るように議場での説明や議論を踏まえて賛否を直接意思表示をすることがとても大切です。
年1回の通常総会には、出席するのが当たり前!が標準になってくれると組合運営もより活発になることが予想されます。

総会の出欠確認の際には、管理会社にお任せにするのではなく理事会も声がけするなど出席者を増やす努力が必要と考えます。

CASE 5大規模修繕工事の進め方

築12年 320戸 複合用途型マンション 理事(修繕担当)
Q
先月の理事会で、管理会社より、今期の事業計画でもある来期の大規模修繕工事に向けての建物の調査の提案がありました。修繕担当である相談者が詳細を検討するということになったのですが、今でも結構時間も取られていて現実的ではないのですが、どのように進めたらよいのでしょうか。
A
建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事(外壁、屋上防水鉄部塗装など)を大規模修繕工事といいます。

相談者のマンションの規模で大規模修繕工事を実施する場合は、構想から工事実施まで2~3年を要することになります。更に、内容が専門的であることなどから、理事会の諮問機関となる専門委員会を設置することが有効と思われます。

専門委員会を設置することがどのマンションでも有効とは限りません。まずは、大規模修繕工事の進め方に関する件を話し合い、その中で専門委員会の必要性や合理性があるか否かなども検討されると良いと考えます。

(例)大規模修繕工事の進め方 設計監理方式とした場合
① 大規模修繕工事の検討開始
② 専門委員会の設置・検討(総会決議 専門委員会運営細則の制定)
③ コンサルタントの選定(総会決議)
④ 調査・診断、修繕基本計画の策定
⑤ 調査・診断の結果の広報や報告会
⑥ 修繕工事内容・工事時期の決定、資金計画策定
⑦ 施工会社の選定・決定
⑧ 総会開催・決議
⑨ 工事請負契約
⑩ 大規模修繕工事の施工
⑪ 竣工
⑫ 設計図書・書類等の引き渡し、保管
※長期修繕計画の作成
※アフター点検(工事後のアフターサービスに関する体制などの内容を明確にしておく。)

「どのような体制で進めるのか」、から協議することが望まれます。

CASE 6合意形成について

築8年 300戸住居専用型マンション 理事長
Q
昨年の総会で出席者から「理事会が何をやっているか分らない。」というご意見をいただいて以降、理事会議事録を掲示するようにいたしました。しかし、今回の総会でも、同様のご意見の他、普段は掲示板を見ない等の発言もありました。今期は、広報を充実することを計画しています。他の管理組合ではどのような広報を行っているのでしょうか。
A
平成17年1月に国土交通省より、「マンション管理標準指針」が公表されています。これは、{マンションの維持・管理のため、「何を」「どのような点に」留意すべきか}について、マンション管理の重要事項に関する標準指針が示されたものです。

下記は、この指針の、理事会議事の広報について標準的な対応とコメントです。
標準的対応:
開催された理事会の日時、議大東の広報を個別配布、掲示、広報紙への掲載等の方法により実施している。

コメント
◆理事会議事について、区分所有者に周知することは、管理組合運営の透明化に寄与し、開かれた民主的なものとすることに資することになります。また、理事会は、区分所有者の信頼のもとに選任されている理事によって構成されるもので、区分所有者のため、誠実に職務を遂行していることを報告する意味合いを持つことになります。
◆しかし、理事会は執行機関としての役割から、決議に至らない話し合いや検討、又は各理事や管理会社からの報告にとどまることも少なくないしょう。
◆このことから、理事会の議事は、総会議事のように、議事録等の個別配布までは要しないものの、理事会の開催日時、議大東を広報することで、区分所有者が必要に応じて議事録を閲覧できることとすることは必要と考えられます。
◆以上により、「開催された理事会の日時、議題等の広報を個別配布、掲示、広報紙への掲載等の方法により実施している。」を「標準的な対応」としました。

マンション管理士として多くの管理組合の広報をみてきましたが、管理組合でホームページを開設しているケース等もある中、一番広報としての効果があると思われるのが、「理事会便り」等の広報紙の個別配布です。議事録のような詳細な記載ではなく、理事会議事の主な内容の他、イベント、近隣の情報などまで組合ごとに工夫をされています。
このアドバイスをしますと、まず、困るのが「誰が行う?」になります。組合によって進め方は色々とですが、広報委員等があれば担当していただくようにします。そして、定期的に継続していくことが望まれます。